顕微鏡治療は歯科用マイクロスコープを使用して治療部位を20倍までに拡大視しながらおこなう、治療方法です。
歯科用マイクロスコープは眼科や脳神経外科などの手術で使われていた手術用顕微鏡を歯科用にしたものです。医科の分野では血管縫合や脳神経手術など細かな手術は顕微鏡を使って行います。歯の治療も肉眼では確認しづらい治療が多いのです。
そこで歯科用マイクロスコープを使って超精密に治療を行うようになってきました。
マイクロスコープを使用することによって、肉眼では見ることの出来ない歯の細かい凹凸や、隠れた根管、補綴物のフィットの状態など様々なことが分かるので、診断能力が大幅に向上し、より精密な治療を行うことが出来るようになります。
人間の肉眼でのものを見分ける力は0.2mmが限界と言われています。しかし、保険外診療で行うような高度な治療においては上記のようなミクロン単位の正確さが要求されます。そのようなとき、マイクロスコープを使用し、肉眼の3~20倍に拡大した視野で治療を行うことで、より正確な作業が可能となり、治療のレベルを格段に向上させることができます。
歯科でのマイクロスコープの普及率はまだ5%もありません。あまり聞きなれない治療法ですが、根管治療専門医や精密な治療を行っている歯科医院では導入が進んでいます。
歯を削る虫歯治療、根管治療(歯の神経の治療)、補綴治療(被せ物の治療)歯周病治療、インプラント治療、口腔外科など、ほとんどすべての歯科治療において肉眼でおこなう従来の歯科治療よりも顕微鏡治療のほうが精度の高い治療が可能になります。
顕微鏡歯科治療のメリットとしておもにあげられるのは、
- 見えにくい所も拡大し見ることができる。
- 特に歯の根管(根っこの部分)の治療に効果的。
歯の根の治療は通常の治療では直接中を見て行うことはできません。マイクロスコープを使うことによって歯の根の先端まで確認でき、複雑な形態の歯の根の中の汚れを取り除くことができます。
- より精密なMI治療(ミニマルインターベンション・最小限治療)
- マイクロスコープで治療を行うと歯を削らなくてはいけない部分と、削ってはいけない部分を正確に確認することができます。そのため通常使われる器具より1/3〜1/10のものを使うために、歯を削りすぎず、歯の寿命を延ばすことができます。
- 患者が治療内容を把握しやすい
- 歯科用マイクロスコープで実際に見ている拡大像をモニターに映し出すこともできるため、治療内容を把握しやすいということもあります。
- 高精度な治療ができる
- マイクロスコープは肉眼の20倍もの拡大率で治療ができます。そのため被せ物などの精度も高められます。被せ物の際に歯を削る時や被せる時、接着する時などより高度な治療を行うことができます。
歯周病治療では感染源である歯石の取り残しがないように、歯の表面を綺麗にします。
そのためマイクロスコープを使い、歯の表面を確認しながら治療を行います。
また、溶けてしまった骨を再生させる手術もマイクロスコープで超精密な治療により歯ぐきや骨を再生させます。
- 歯の根の治療の根管治療
- できるだけ削らない虫歯治療
- 高精度なセラミック治療
- 歯石の取り残しを防ぐ歯周病治療
- 歯周再生療法による歯周病治療
根管治療(虫歯菌に感染してしまった歯の神経を取り除いて消毒し、再び菌が入り込まないように歯の根っこに薬を詰める治療)は、マイクロスコープが最も必要とされる治療のひとつです。
歯の中にある根管は、非常に複雑で細かい形態をしているにもかかわらず、従来は、”手探り”で、手指の感覚だけを頼りに治療を行ってきました。非常に緻密で難しい治療です。一般的に大きな病巣のある根管治療の再治療の成功率は60%だともいわれています。
しかし、マイクロスコープを使用することにより、肉眼で見えない根の内部まで見ながら処置ができるため正確に治療が行うことが可能となり、治療のレベルを格段に向上させることができます。
すでにアメリカでは1998年に、根管治療の専門医は歯科用マイクロスコープを使用した治療が義務化しています。
今までの歯の治療は直接見ることができない部分もあるため、歯科医の勘や経験で治療を行っている部分もあります。しかし、歯の形は複雑で決して勘で治療できるものではありません。歯科用マイクロスコープは今まで肉眼では見ることができなかった部分まで、確認しながら治療ができるために治療の精度が上がります。
審美歯科治療では、美しさとともに「生体に親和した機能」を得ることが必要となるため、あらゆる治療ステップにおいて、非常に高い精度が要求されます。
通常、適切な審美歯科治療を達成するには、30~40ミクロンという非常に高いレベルの精度を必要とします。肉眼のみに頼った従来の治療では、当然限界があるため、理想的な精度を得ることはできません。
しかし、拡大鏡を使用することによって、肉眼では見ることの出来ない歯の細かい凹凸や、隠れた根管、補綴物のフィットの状態など様々なことが分かるので、診断能力が大幅に向上し、より精密な治療を行うことが出来るようになります。